罔兩庵日乗 mouryouan’s diary

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ナルシスの混乱、或いは葉隠 【哲学】

ナルシスの混乱、或いは葉隠 【哲学】

ナルシスのお話は、美少年が水に写った自らの美しい姿に恋をする話だ。

このとき、少なくとも最初は、

A.主体(男)→♥恋→他者(女) 
 と、間違ってしまっているわけで、本当は
B.他者(女)=主体(男)
 な、訳である。が、本人的にはA.が事実として認識されている。

ここに、無意識の誤解はあるが倒錯はない。

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⚪大衆型(事実誤認型)ナルチシズム

さて、
ナルチシズム と一般大衆が使用する場合の構造を考えてみる。主体は男と仮定する。

C.{他者(女)→恋♥→主体(男)}⊂主体が空想する。

と云う事態を想定している場合が多いように思われる。  
恋するのは妄想した実在の異性達であり、その妄想を肯定する同性達をも妄想する。
主体に分裂はなく、性的同一性は保たれている。

ここにも、倒錯はなく、多くは誤解もなく、意識的な事実の曲解、無知、愚昧さ、即ち幼稚な嘘があるだけだ。
 
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ホモセクシャル型ナルチシズム

が、先に「少なくとも最初は」と、書いたように、そのうちにナルシスは自らの性愛の対象は自分だと気が付いたはずだと思う、バカでなければ。
すると、話はやや変わる。

D. 主体(男)→♥恋→主体(女) 
と、なってしまい、上手く行くと倒錯が成立してしまう。
倒錯が成立してしまうと、そこにもはや誤解も嘘も成立する余地はない。

しかし、この倒錯はトランスベスタイト(おっさんが女の服を着たりすること)などの典型的な変態と比べて事情は同じなのか?違うのだろうか?

この倒錯と云う変態さんは満ち足りている。
対外的にはともかく(何たって変態なんだし……)、主体内に構造的な問題はない。

ホモセクシャル型ナルチシズムは、
主体は精神的には性的に可能な自分を恋してるのだが、肉体的には一人二役は不可能。

E.主体(ホモ男)→恋♥→他者=主体(ホモ男)}

で、不可能だが、誤解も嘘も無く、一番すっきりしている(?何がスッキリ??)。

この場合は、主体は一種のホモセクシャル、いや引き裂かれたバイセクシャルとなり、倒錯を楽しむのか?
はたまた、苦しむのか?

多くの場合は、ホモセクシャルの覚醒過程の問題で、いずれ対象は実在の他者に移っていくのではないか?

この場合、ナルチシズムは、精神的タブーを回避する心理的役割として一時的に機能しているのではないか?

だいたい、ホモセクシャルの問題とは社会との関係性の問題が大きいのではないのか?

いまいち変態さんの気持ちはわからない。
感情移入ができない。

どちらにしろ、E.は変態ナルちゃん(……最近は変態って言っちゃイケないのかな?)なレアケースであろう。
でもないのかな?最近世の中変だから。

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⚪非性愛型ナルチシズム

ホモじゃなく、乖離性人格障害?……でも、無いとしたら、

主体は最初から恋などしていない。

F.主体(男)⊂理想像(男)
           
「自分勝手に妄想した理想の同性像。
これと自己を同一視させてしまう二重の妄想。」  

ほとんど、性とか恋とかと無関係なナルチシズム。
少なくとも男性には、あると思います

G.理想(男)←恋←理想(女)
 
ま、理想の男性像は、理論的には理想の女性にもてるはずなので、全く性的なものがないわけではないが、直接的には性愛の臭いはしない。

そもそもこれ(G.)は、机上の空論だとはみんな知っている。
この種の(精神的マチズム?)男性の理想とする男性像と、女性にもてる男性像には隔たりがある。
寡黙なハードボイルドより、薄っぺらな優男や思想無きお笑い芸人の方が昔からもてる。
高倉健(的な……)は僻地の鉄道員で終わる。
 
なんとなく、騎士道に似ている。
(騎士道=貴族の跡継ぎでない男子が、高貴な人妻を精神的な愛の対象として蛮勇を奮う奇行)
愛の対象と、性とにはタブーが横たわり断絶がある。
至上の愛は性を離れる。

騎士道と違い、この種のナルチシズムは愛の対象すら無くなる。
いや、その意味、狭義での愛などない。

自己愛って、スピノザ的には矛盾でしょ?
エチカODGでは、「愛とは他者に原因を持つ喜びの感情」だったような……ね、おかしいでしょ?

ただただ、意固地な自分勝手な理想像が強化されて行く。

理想像とは英雄的である必要もない。
アウトサイダー、陰遁者、自己破滅型芸術家、世捨て人、革命家……犯罪者ですらありえる。イヤハヤ💨
こうなると、愛の匂いも、異性の影さえ見えなくなる。

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女性の場合は、宗教者にこのタイプのナルチストがみられたようであるが、今はもう絶滅したのではないか?

一種、典型的な男性精神とはシーラカンス的に硬直して進化も退化もせず、ある一定数は生き残っていくようだ。

精神的なロスカット(損切り)に、本物の腹を切ってしまうなんて、本末転倒なのだが……

葉隠れは死なず。